ケース スタディ
概要
味の素株式会社
所在地 東京都中央区京橋1-15-1
食品製造
調味料・食品・冷凍食品などの食品系事業、バイオファーマサービス&イングリディエンツ、ファンクショナルマテリアルズなどのアミノサイエンス系事業
34,615名
(連結・2023年3月現在)
NRIシステムテクノ株式会社
神奈川県横浜市西区みなとみらい4-4-1
情報通信
情報システムに関するコンサルティング業務、情報システムの設計および開発業務の受託ほか
342名
(2023年7月現在)
味の素(株)は、東京帝国大学 池田菊苗博士が発見した「うま味」成分のL-グルタミ ン酸ナトリウムを原料とするうま味調味料「味の素®」を製造・販売するために、1909年 (明治42年)に創業した日本を代表する食品メーカー。創業以来、うま味物質の発見 から見出したアミノ酸の可能性を探求し、食品、アミノサイエンス、医薬・健康分野を中 心にビジネスを展開し、広く社会に貢献してきた。現在は「アミノサイエンス®で人・社 会・地球のWell-beingに貢献する」をパーパスに掲げ、社会価値と経済価値を共創す る独自の経営の基本方針「ASV(Ajinomoto Group Creating Shared Value) 経営」に取り組んでおり、そのASV経営を進化させる手段としてデジタルトランス フォーメーション(DX)の積極的な推進による事業変革をグループ全社で進めている。
DX推進の一環として、味の素(株)が進めているのが、ゼロトラストの考え方に基づくセキュリティモデルを採用したネットワークの構築だ。
「未来の予測が難しいVUCA(Volatility, Uncertainty, Complexity, Ambiguity) 時代と呼ばれる今日、味の素グループが目指すASV経営を加速させ、グループ全社が 安心して業務を遂行できるようにするために、ネットワークセキュリティの強化に取り組 むことが喫緊の課題でした。この課題を解決するために、味の素(株)ではゼロトラスト セキュリティモデルを取り入れたネットワークの構築を進めることにしました」(味の素(株) DX推進部 グローバルITサービスグループ マネージャー 小宮洋子氏)
味の素(株)が新しいネットワークの整備に着手したのは、およそ5年前(2018年頃)にさかのぼる。味の素グループの情報システム構築・運用を担当する関連会社であるNRIシステムテクノ(株)((株)野村総合研究所51%、味の素(株)49%出資)によると、それ以前から働き方改革を目指したリモートワーク環境の整備に取り組んできたという。
「味の素グループでは、在宅勤務やサテライトオフィス勤務といった働き方改革を推 進するために、SSL-VPNやプロキシサーバーを導入してリモートワークに対応したネッ トワークを構築していました。しかしクラウド利用が進むにつれ、オンプレミスのデータ センターにVPN経由でアクセスするというネットワーク構成では、レスポンスや可用性 の低下を招くおそれがありました。また、従来の境界防御型セキュリティでは巧妙化す るサイバー攻撃のリスクも懸念されたため、ゼロトラストネットワークへの刷新を検討 することにしました」(NRIシステムテクノ(株)基盤システム事業部 課長 神崎昭子氏)
ゼロトラストネットワークへ転換することにした味の素(株)の方針のもと、NRIシステ ムテクノ(株)はゼロトラストを実現するSASE(Secure Access Service Edge)ソ リューションの導入に向けた評価を行うことにした。
「複数のソリューションを導入候補に挙げ、実際にPoC(概念実証)を実施して検討しました。最初にPoCを実施したソリューションは、当社が想定していた費用対効果が得られないと判断し、導入を断念しました。そうしたなかでコロナ禍が始まり、味の素グループの多くの社員が在宅勤務でリモートワークを実施しました。すると、すべてのアクセスがVPN経由でデータセンターに集中するという従来のネットワークでは回線帯域が逼迫し、遅延が発生して業務に支障を来すといった問題に直面しました。そこで短期的な施策としてVPNの能力を大幅に増強するとともに、抜本的な対策としてデータセンターにアクセスしなくとも安全にクラウドが利用できるゼロトラストネットワークへの移行を急ぐことにしました」(神崎氏)
味の素(株)が改めてゼロトラストネットワーク向けソリューションの選定作業を開始したの は、2021年9月のこと。そこからPoCの実施を経て、最終的に採用することに決めたのが、パ ロアルトネットワークスのクラウドセキュリティプラットフォーム「Prisma Access」だった。
「Prisma Accessは、リモートワークのユーザーが意識することなくクラウドへのア クセスだけをPrisma Accessに切り替えることができます。必要とするセキュリティ 機能の技術的な要求事項も十分に満たしており、将来的にセキュリティの高度化も見込 めます。さらに費用対効果が優れていたことも決め手となり、Prisma Accessを採用 することに決めました」(神崎氏)
こうして2022年8月、Prisma Accessの導入を決定。導入に向けた開発・設定・テストを 9月から実施し、2023年3月から段階的に本番運用を開始した。ちなみに味の素(株) では、Prisma Accessの各種オプション機能とともに、統合管理製品「Panorama」 やログ管理サービス「Cortex Data Lake」も導入している。
「Prisma Accessの導入はコロナ禍という状況のなかで行ったため、リモートワー クで働くユーザーの業務に影響を与えず、セキュリティレベルも下げないように慎重に 進めました。導入当初はオンプレミスのVPNとPrisma Accessを並行利用するた め、導入作業が複雑になったものの、各業務システムの動作確認を実施し、あらゆる不 具合を想定しながら導入作業に取り組みました。一方で全社員を対象にしたオンライ ン説明会を開催し、ユーザーの個別判断による業務継続を可能にする対策も用意しま した。そうした十分なリスク対策を講じたことが奏功し、実運用開始時の業務への影響 を最小限に抑えることができました」(神崎氏)
味の素(株)がPrisma Accessの運用を開始してから半年以上が経過した現在、さ まざまな導入効果を実感しているという。
「Prisma Accessを導入したことでネットワークセキュリティを自社資産からクラウド利 用に切り替えられたことによるアセットライト効果に加え、『セキュアで利便性が高いリモート アクセス』を実現出来たことでASV経営の進化に貢献出来たと感じています。ユーザーか らも『クラウド利用の利便性が高まった』といった声が寄せられるなど、ユーザビリティ観点 からもPrisma Accessの導入効果を感じています。また導入から現在まで、大きなトラブ ルに見舞われることなく利用できているところに関して、非常に満足しています。」(小宮氏)
導入・運用を担当するNRIシステムテクノ(株)でも、Prisma Accessの効果を実感 しているという。
「Prisma Accessを選定して良かったと感じるのは、開発・設定・テストという一連の 作業がスムーズに進み、予定通りに導入できたことです。運用開始後も、安定して稼働 し続けており、味の素グループが目指すゼロトラストネットワークの実現に一歩近づい たと考えています」(神崎氏)
味の素(株)とNRIシステムテクノ(株)では現在も引き続きPrisma Accessの導入を 進め、2023年度内には国内の味の素グループ会社への展開が完了する予定だという。 また、2024年度までにはタイの関連会社を皮切りに、フィリピンやインドネシアなど東 南アジアを中心とした海外グループ会社への展開も計画中であるとのことだ。
「今回は主に在宅勤務やモバイルからのリモートアクセス利用を対象に導入を進め ました。各事業拠点からのクラウド利用については、一部のクラウドサービスはSDWAN経由でローカルブレイクアウトしていますが、その対象外となっているインター ネットアクセスにはPrisma Accessを適用していく計画を立てています。さらにゼロ トラストの施策として、Prisma Accessのログを活用していくことも計画しています」 (神崎氏)
Prisma Accessの導入により、ゼロトラストネットワークの実現に一歩近づいた味 の素(株)。パロアルトネットワークスのソリューションは、今後も同社が目指すネットワー クセキュリティの強化に大きく貢献していくことだろう。